ドライフラワーになりやすい花と、なりにくい花の違い
生花を飾り終えた後、そのままドライフラワーとして部屋に残したいと思う方は少なくありません。しかし、同じように吊るして乾燥させても、きれいに仕上がる花とそうでない花があることに気づかれたことがあるはずです。その差は偶然ではなく、花の構造と水分量、そして色素の性質によって決まります。Jasper Meadow では、仕入れの段階からドライへの転用を意識して品種を選んでいます。この記事では、その判断基準を具体的にお伝えします。
ドライフラワーの成否を決める三つの植物的条件
花がきれいに乾燥するかどうかは、主に「花弁の水分含有量」「構造的な硬さ」「色素の光安定性」の三点で決まります。水分が多くやわらかい花弁は、乾燥の過程で細胞が崩れ、透明感を失って茶色く変色します。一方、もともと薄くて紙質に近い花弁は、水が抜けても形を保ちやすく、色も残りやすい傾向があります。
色素については、アントシアニン系(ピンク・赤・青紫)とカロテノイド系(黄・オレンジ)で挙動が大きく異なります。アントシアニンは乾燥と光にさらされると退色しやすく、ドライ後に全体がくすんだベージュになることがあります。カロテノイドは比較的安定しており、黄色やオレンジの花がドライフラワー向きとされる植物学的な根拠はここにあります。
ドライフラワーになりやすい品種とその理由
Jasper Meadow が仕入れ時に積極的に選ぶ品種の筆頭は、スターチス、ラグラス(ウサギのしっぽ)、ケイトウ、そしてスモークツリーです。スターチスは花弁がもともとほぼ膜質で水分がきわめて少なく、吊るして一週間もあれば生花とほぼ変わらない姿を保ちます。ラグラスは穂全体が細い毛で覆われており、乾燥によるダメージが表面に出にくい構造です。
バラについても、花弁が厚く重なる品種より、花弁が少なく開ききった一重咲き系のほうがドライに向いています。日本で秋に多く出回るコスモスは一見やわらかそうですが、完全に開く前の七分咲きで切ってシリカゲル乾燥させると形が保たれます。吊り下げ乾燥の場合は適さない品種でも、乾燥剤を使う方法に切り替えることで対応できる場合があります。
花がドライに向くかどうかは、触ったときの感触よりも、花弁の断面の厚みで判断するほうが正確です。
ドライフラワーになりにくい品種と、その具体的な理由
チューリップ、ガーベラ、トルコキキョウの大輪品種は、いずれも水分含有量が高く、花弁の細胞壁がやわらかいため、乾燥中に形が崩れやすい代表格です。チューリップは特に顕著で、乾燥が進むにつれて花弁が外側に大きく反り返り、最終的には原形をとどめないことがほとんどです。
カーネーションも、フリルが多い品種は花弁どうしが重なり合った内部に水分が残りやすく、カビが生じるリスクがあります。加工技術でカバーできる場合もありますが、Jasper Meadow ではドライ転用を前提とした仕入れにはこれらの品種を選びません。生花として飾る期間を楽しみ切ることを、むしろ正直にお勧めしています。
仕入れ時に Jasper Meadow が確認していること
産地と収穫タイミングは、ドライの仕上がりに直結します。日本国内では、長野県や北海道の高原産のスターチスやヘリクリサムは、低湿度環境で栽培されているため水分含有量が低く、ドライ向けの品質が安定しています。一方、同じ品種でも梅雨時期に収穫された花は内部に水分を多く抱えており、乾燥に余分な時間がかかります。
- 花弁を指先で軽く押して、紙のような張りがあるかを確認する
- 茎の断面が細く、維管束が密であるかを見る
- 開花度合いは五分から七分咲きを基準にする
- 収穫から仕入れまでの日数が三日以内であることを確認する
- 梅雨期(6〜7月)の仕入れは乾燥時間を通常の1.5倍に見積もる
生花として飾りながらドライへ移行するための現実的な手順
生花を飾った後にドライへ移行する場合、タイミングが重要です。水に挿したまま完全に開花しきってしまうと、花弁が薄くなりすぎてドライ中に破れやすくなります。花が七分から八分開いたところで水から上げ、茎を短く切り直して風通しのよい日陰に逆さに吊るすのが基本です。直射日光は色素を急速に分解するため、日本の夏場は特に注意が必要です。
湿度が高い季節は、室内干しよりもシリカゲルを密閉容器に入れて花を埋める方法が確実です。スーパーや百円均一で手に入る食品用シリカゲルでも十分機能しますが、量の目安は花一輪あたり約200グラムです。容器はタッパーなど密閉できるものを使い、三日から五日で花弁の感触を確認します。乾ききっていなければ新しいシリカゲルに交換してさらに二日置きます。
完成したドライフラワーは、直射日光と高湿度を避けた場所に飾ると色と形が長持ちします。日本の住宅では、南向きの窓辺よりも北側の廊下や玄関の壁面が適しています。Jasper Meadow では、お客様がお選びになった花束にドライ転用の可否を添えてお伝えすることを、日頃からの習慣にしています。
花選びの段階でドライへの転用を視野に入れておくと、一束の花から得られる時間がずっと長くなります。品種や産地についてご不明な点があれば、いつでも店頭でお声がけください。